歌庭コラボ 柳と蛙


時は平安時代、小雨降るなか一人歩くは小野道風(おののとうふう)。後の日本一の書道の達人です。
この頃の道風は自分の才能のなさに自己嫌悪に陥り、書道をやめようかと真剣に悩んでいます。その時・・・
花札の絵にもなっている「柳と蛙」の逸話です。雨の京都、負のオーラ出まくりのスランプ書道家とくれば、いつ妖かし(あやかし)が現れても不思議はありませんね。

池のほとりに柳の木、まるで平安絵巻のように歌に合わせて、次々と庭が出来上がって行くなか、蛙が登場です。
柳の枝に何度も何度も飛びつこうと挑戦している姿を見て道風は、「蛙はバカだ。いくら飛んでも飛びつけるわけはないのに」と、はじめは軽蔑していますが、やがて「もう少しだ、がんばれ」と応援する気持ちに変わっていきます。
作品のなかでは、蛙に見立てた自然の姿石が登場します。自然の石を動物の姿に見立てる姿石の技法は、いにしえの日本庭園でもよく使われているのです。
ついに蛙は柳の枝に飛びつくことができました。これを見届けた道風は目が覚めるような思いをして、血の滲むような努力をするきっかけになったと云います。
衝立が外れると、そこは別世界。眩しい光臨に包まれています。もしかしてこれが悟りの世界?
こ の逸話は、単に努力することの大切さを現しているだけではなく、もっと奥深い真理というか、悟りに至る境地のようなものまで暗示されているような気がしま す。禅の庭では作者自身が修行の末に境地に至るまでの心象風景を表現しなければなりません。相方が自ら作曲した音楽もまた、宗教音楽のような高みが感じら れました。


歌庭コラボ

世界で初めての庭園家とソプラノ歌手によるコラボ、「田畑冬樹&岡本麻里菜」

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